忙しくしていると中々気づかないが、暇な時に街中をプラプラしていると、個人経営のお店がまだまだたくさんあることに気づく。日用雑貨店やリサイクルショップ、古書店などなど。その中の一つに時計屋さんもある。へぇ~こんなところに……などと見ていると、時計店と言いつつ、メガネや補聴器、あるいは宝石なんかも売っていることがある。
時計とメガネ? 時計と補聴器? それに宝石も? これはなぜだろうか。知っていても役に立たないかもしれないが、一度気になると調べたくなるものだ。同じように疑問に思っている人も少なくはないようだ。
よくわからない小売店の組み合わせとして、ちょっと田舎になると化粧品屋と文房具屋ってのがある。あと時計と宝石。時計とメガネがあるけど、この時計、宝石、メガネの組み合わせがなぜそうなるのかわからない。どれも専門技術を持った人が必要だと思うんだけど。まあ、売るだけならなんでもいいか。
— de_stijl (@twilightlandsca) 2017年5月8日
なぜメガネ・宝石・時計を一緒に取り扱う店が多いのか?なぜ普段そんなに必要ない物なのにつぶれないのか?そしてなぜあの店は一言多いのか?不思議だ。
— タケ兄ィ (@Take2exp) 2013年3月23日
眼鏡屋で、時計と補聴器を扱っているのはなぜ?老眼鏡と補聴器で顧客が一緒だから?それとも一商圏で時計とか補聴器みたいな細かい作業ができる人が眼鏡屋にしかいないから?
— naotohir (@naotohir) 2011年2月1日
時計屋さんでメガネや補聴器、宝石が一緒に売られている理由
現在ではJINSやメガネスーパーなどメガネを専門に販売しているお店が少なくない。そうした量販店のおかげで今やメガネとレンズを合わせて1万円以下という破格で購入できるようになったが、以前はメガネといえば高級品だった。坂口安吾の「石の思い」という小説にはこんな記述もある。
私は小学校の時から近眼であつたが、中学へはいつたときは眼鏡なしでは最前列へでても黒板の字が見えない。私の母は眼鏡を買つてくれなかつた。私は眼が見えなくて英語も数学も分らなくなり、その真相が見破られるのが羞しくて、学校を休むやうになつた。やうやく眼鏡を買つて貰へたので天にも昇る心持で今度は大いに勉強しようと思つたのに――(坂口安吾・石の思い)
高級品であるメガネは、それ単体ではなく、「高級雑貨」というくくりで販売されていた。こうした高級雑貨店は明治から大正時代にかけて増えて、昭和にはメガネ、時計、宝石、補聴器などの高価な雑貨を販売する業態になったとされている。つまり、なぜ時計店でメガネや宝石、補聴器を販売しているのかという問いに対しての答え①は、「身につけるもの、特に高価なものというくくりで販売していたから」というわけである。
さらに、時計には精密機械という側面もある。時計は精密機械のため少しの機微で調子が悪くなるため、修理をする技術が必要となる。子どもの頃からメガネをかけている方なら分かるかもしれないが、メガネもちょっと転んだりボールが当たったりすると、フレームがすぐに歪んでしまう。つまり、時計もメガネもそれ相応の技術を要するアフターケアが必要なのだ。つまり、細かい物を扱う時計修理の技術をメガネにも応用しやすかったというのが答え②といえる。
まとめ
まとめると「時計やメガネを高級雑貨として販売していた」、「精密機器かつアフターケアが欠かせない」というのが、問に対する答えになる。ちなみに、時計は入学や就職祝いのある春に強いとされ、宝石は春と秋のブライダルシーズン、そしてメガネは季節問わず販売できることから、ビジネスの面でも相性が良かったといわれている。
なお、時計は1950代にクオーツ式が売られるようになると露店でも扱えるぐらい価格が下がっていった。クオーツ式とは、それまでのゼンマイ式のものではなく、電池で動くタイプのこと。前述した通り、メガネも量販店の登場で低価格で購入できるようになった。いずれも高級品というイメージが少しずつ薄れているため、一緒に扱う違和感が出ているのかもしれない。
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