一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)の目的は?プロ化?景品法?

2月1日(木)、「一般社団法人日本eスポーツ連合」(英語名:Japan esports Union、略称:JeSU)が活動を開始するとハイアットリージェンシー東京で発表しました。同団体HPに寄れば、「日本のeスポーツ産業の普及と発展」が主な目的といいます。

ゲームに関わっている人やゲーム好きの人であれば、業界が盛り上がってくれることに越したことはありませんが、同団体の設立に関しては、「なにそれ? 急になに?」「どこから出てきたの?」「何が目的? プロライセンス発行? 利権? 何となくきな臭い……」といった反応が正直なところではないでしょうか。

では、何が目的か? というのを見ていきたいと思います。これを論じるときに「プロライセンスができれば賞金額を上げられるのでは?」という点と「プロって認定されると何か格好いいし社会的地位が上がりそうだよね」という点がごっちゃになるとややこしくなるので、整理して見ていきましょう。まずは、プロライセンスと景品表示法についてです。

プロライセンスと賞金額の上限って、そもそも関係あるの?

景品表示法に入っていく前にeスポーツを取り巻く法律をちょこっと整理してみたいと思います。eスポーツが生活が成り立つほど盛り上がってきたのは近年になってからなので、良くも悪くも目立ってきて「これ違法じゃね?」という意見も出てきたわけです。その筆頭といえる賭博罪にだけ触れたいと思います。「プロライセンスと景品表示法の関係」についてだけ知りたいんだよ!という方は読み飛ばししてもOKです。

賭博罪

賞金をかけて勝負事をしているんだから賭け事じゃないか! という意見ですね。ただ、賭博罪の成立条件には相互的損失というのがあります。これはAとBが1万円ずつ持ち寄って、勝負事をし負けたほうが1万円を失い、買ったほうが2万円総取り、といったシステムを指します。たまにトランプ賭博などの単純賭博容疑で書類送検されたり家裁送致されるのはこのケースです。ここで大事なのは持ち寄ったお金を賞金にしていること。第三者、つまりスポンサーなどが賞金を用意すれば賭博罪には当たらないとされています。ですので、EVO Japanのように第三者が賞金を用意する場合は賭博罪には当たらないでしょう。

景品表示法

で、件の景品表示法に入っていきたいと思います。景品表示法とは、元々消費者がより良い商品やサービスを安心して選べることを目的とした法律。その中の「過大な景品類の提供の禁止」というのが注目ポイント。これは、「この商品を買った人から抽選で1000万円が当たる!」とか「ボウリング大会で優勝したら超豪華賞品を贈呈!」といったものに対して、「それ、景品でつっとるやん。ダメダメ。あくまで商品やサービスの内容で勝負してね」というもの。具体的には、景品は「取引価格の20倍」か「10万円」までといった限度額が決められています。これが「eスポーツの賞金は10万円までしか出せない!」と話題になった理由です。

とはいえ、元々、景品表示法は消費者保護のための法律。なんでこれがeスポーツと関係があるのでしょうか? それは、あるカジノ研究家の方が、景品表示法を管轄している消費者庁に「この場合は法律的にどうなんでしょう?」と確認したことに端を発しています。覚える必要はありませんが、この確認のことをノーアクションレター制度とか法令適用事前確認手続とかっていいます。

その確認で、【本件企画において成績優秀者に対して提供される賞金は、景品表示法第2条第3項に規定する「景品類」に該当するとかんがえられることから、本件企画における賞金の最高額は、「検証による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年3月1日公正取引委員会告示第3号)第2項で規定される金額(懸賞に係る取引の価格の20倍の金額〈当該価格が10万円を超える場合にあたっては、10万円〉)を超えてはならない】という回答が出てきたから、「あわわ~。やっぱりeスポーツの賞金は10万円なんや~!」となったわけです。

しかし、このノーアクションレターのみで判断するのは時期尚早。結論だけ見ると「10万円以上は出したらアカンで」と読めますが、①そもそも何を確認したのか?ということと、②消費者庁は何に対してアカンでといったのか、という点をよくよく見る必要があります。

では、①そもそも何を確認したのか? という点。全文は消費者庁のHPに公開されています。ちなみにこちら。照会

では要所だけ抜き出していきましょう。まずは、どの立場から確認を行ったのかという点です。これは、「ネットワークを介して異なる筐体間で対戦することができる機能を有するアクションゲームを一般消費者に供給する事業を営む具体的な予定があるところ」です。噛み砕くと「ゲームを作っているメーカー」です。

では、そのメーカーが何をすることについて確認をしているのでしょうか? それは「当該アクションゲームの認知普及のためのプロモーションの一環として、当該アクションゲームの販売又は提供期間中に、当該アクションゲームを使用した大会を開催し、その大会における成績優秀者に対して賞金を提供するという企画を考えている」です。つまり、「ゲームを売るためのプロモーションとして、賞金付きの大会を開催したい」ということですね。

最後に大事なポイントが一つ。それは、「当該アクションゲームをそもそも遊戯したことがない者であっても大会に参加することはできるが、本アクションゲームにおける技術向上のためには、原則的に繰り返しゲームプレイが必要であるため、有料ユーザー以外の者が『成績優秀者』として賞金を獲得する可能性は低いと考えられる」と補足されています。この有料ユーザーというのは、ゲームソフトを買った人とゲームセンターで当該ゲームをプレイした人を指します。つまり、「ゲームソフト買うかゲーセンでやりこまないと、優秀者にはなれませんよ」と言っているわけです。まぁ大会で勝つにはやりこまないといけないわけですから、当然のことですね。

ここで、誰が何を確認したのか?を整理してみましょう。「メーカーがゲームを売るために賞金付きの大会を開催したい。ゲームをやりこまないと優秀者にはなれませんよ」ということです。それに対する消費者庁からの回答がこちら。回答。全文を読みたい人はどうぞ。

要所だけ抜き出すと、「商品又は役務を購入することにより、経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる場合には、経済上の利益の提供は「取引に付随」する提供に当たることになるが、照会者によれば、「有料ユーザー以外の物が成績優秀者として賞金を獲得する可能性は低いと考えられる。これを踏まえれば本件企画は、有料ユーザーが賞金という経済上の利益の提供を受けることが可能又は容易になる企画であり、本件企画において成績優秀者に提供される賞金は、「取引に付随」する提供に当たるものと考えられる」です。

この理由から10万円以上はダメですよ~という結論になったわけですが、長々としてちょっとわかりにくいですね。シンプルに言えば、「過大な景品類の提供の禁止」に触れるからダメですよ~というわけです。過大な景品類の提供の禁止とは、「顧客を誘引する手段として、商品・サービスに付随して提供する物品や金銭などの経済上利益」です。分かりやすく言えば、先ほど書いた「この商品を買った人の中から抽選で1000万円が当たる!」とか「ボーリング大会で勝ったら超豪華賞品を贈呈!」のこと。つまり、「賞金の出る大会がある」→「賞金を得るためにはソフト買ったりゲーセン行かないと無理」→「それって、ソフト買わせたいから、賞金でつってるよね。それはアカン」と言っているわけです。

ちなみに、カジノ研究家の方は、「では、スマホやPCで無料でインストールできるゲームの場合は?」ということで、別の照会書も送っています。それはこちら。照会2。この照会書では、「有料ユーザーが有利になることはなく」と書かれていて、それに対して消費者庁は、「本件企画において、有料ユーザーが有利になることはないとのことであり、本件企画が実施された結果、実際に有料ユーザーが賞金の提供を受けることが可能又は容易になっていないという状況が認められる場合には、指定告示第1項に定める「取引に付随」して提供されるものに当たらないと考えられる」と回答しています。回答2。つまり、「このゲームはそもそも無料なのね。課金しても大会では有利にならないのね。じゃOK」というわけです。

二つの回答を比べてみると、「無料OK、大会で有利になる有料はソフトの購入であってもNG」となります。

ただ、そんなことって本当にあるの?という疑問が沸かないでもないです。景品表示法のロジックは、「賞金につられて買う可能性があるよね?」というものですが、そもそも現在活躍しているゲーマーの方々は、賞金付き大会が出てくる前から、単純に好きでゲームをしていて、それが高じて大会に出ているという流れがあるからです。「ゲームが好き」→「俺より強いやつに会いに行く」というロジックで大会に出ていたのに、「そのゲーム、賞金につられて買ったの?」と言われているようで、感情的に何だかなぁという気持ちがあります。とはいえ、法律は法律。感情論は抜きにして、何か打開策がないのか見てみましょう。

そこで出てくるのが、「景品類等の指定の告示の運用基準」です。簡単にいえば、こんな感じでルールを運用していきますという主旨のもので、そこには「取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められる金品の提供は、景品類の提供に当たらない」と書いてあります。つまり、賞金=仕事の報酬ということが成り立てば10万円以下じゃなくてもいいですよということです。

仕事の報酬というのは、誰かが働いてくれた人に払うもの。ここでいう誰かはゲームを作っているメーカー、働いてくれた人は大会での優秀者ということになります。では、どうすれば仕事の報酬として認められるのでしょうか? この解釈は「仕事の報酬」というのが具体的に定められていないためにファジーなところはありますが、広告塔としての業務というのが挙げられるでしょう。ゲームの大会をネットで見て、自分もそのゲームを買ってみたなんて人は大勢いるでしょう。これは、大会主催者であるゲームメーカーの利益になり、広告塔として出場していたゲーマーには、その広告費として、つまり「仕事の報酬」として対価を払えるのではないかということです。

景品表示法の説明が長くなってしまいましたが、ここでやっと「プロライセンスの発行」が絡んできます。

2月1日に開かれた一般社団法人eスポーツ連合の設立発表会で記者から「プロライセンス発行を通じて選手が高額賞金を受け取れることに、法律的な問題はないのでしょうか」という質疑が出ました。それに対して同団体の代表理事である岡村秀樹氏は「法律的に問題がないのかという点については、私どもの理解では、プロはある種の『生業』としている人達なので、法律的に問題がないと思っています」と回答しました。

ここでよく考えなくてはならないのが、そもそも社団法人から「あなたはプロです」と認められることと、生業、つまり仕事の報酬としてみなされることに何の関係があるのかという点です。これについては、明確なロジックがまだ明らかにされていないので、なんとも言い難いところがありますが、同社団法人がまったく関係のない第三者ではないという点が大きいのではないかと思います。

社団法人の役員一覧を見てみましょう。

会長 岡村秀樹(株式会社セガゲームス、コンピュータエンターテインメント協会会長)

副会長 浜村弘一(株式会社Gzブレイン、元e-sports促進機構理事)

専務理事 平方彰(元日本eスポーツ協会専務理事)

常務理事 鈴木文雄(株式会社SANKO、元日本eスポーツ連盟共同代表理事)

理事 早川英樹(株式会社コナミデジタルエンタテインメント、 コンピュータエンターテインメント協会理事)

辻本春弘(株式会社カプコン、コンピュータエンターテインメント協会専務理事)

越智政人(ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社、日本オンラインゲーム協会共同代表理事)

一般社団法人eスポーツ連合HPより

そして、プロライセンス発行対象ゲームタイトルは以下の通り。

ウイニングイレブン 2018 (株式会社コナミデジタルエンタテインメント)

ストリートファイターV アーケードエディション (株式会社カプコン)

鉄拳7 (株式会社バンダイナムコエンターテインメント)

パズル&ドラゴンズ (ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社)

モンスターストライク (株式会社ミクシィ)

コールオブデューティワールドウォーⅡ (ソニー・インタラクティブエンタテインメント)

簡単にいえば、今後大会の主催者になるであろう、コナミ、カプコン、ガンホーなどが理事の名前にあるということです。そもそもの問題は「ゲームメーカーが該当ゲームを販売するために賞金付きの大会を開くこと」でした。で、その打開策としては「仕事の報酬」として認められることです。つまり、「仕事の報酬」を与える側(ゲームメーカー)が、この人達は経験や成績を鑑みてプロとして判断しました。その報酬としてなにがしかを与えますという姿勢が示されたわけです。

とはいえ、これもどうなるのかは分かりません。というのは、報酬を与える側と受け取る側が、そう理解していたとしても、仕事の報酬か否かを判断するのは消費者庁になるからです。しかし、名だたる企業が何の確証もなく動き出すというのも考えにくいので、プロライセンス発行=職業という確証が取れたと考えるのが自然といえるでしょう。

まとめ

景品表示法のことばかり長々と書いてしまいましたが、他にも一般社団法人日本eスポーツ連合が設立したことで、得られそうなメリットはあります。日本オリンピック委員会への加盟に向けて前進したというのもそうですし、プロと認定されれば社会的にも認められやすくなるというのもあるでしょう。加えて、法律の知識がある団体がリスク管理をすれば、思わぬところで法に抵触してしまう危険も減ります。

そもそも、ボクシングには日本ボクシングコミッションがあったり将棋に日本将棋連盟があるなど、認定団体があることは珍しいことではありませんし、過渡期にはそうした団体が生まれてきた歴史もあります(景品表示においては、これらを混同するのはよくないかもしれませんが)。いずれにせよ、ルールが整備されたことで生活が安定したプレイヤーもいたはずです。一ゲームファンとしては、これまで日陰のコミュニティという点も好きだったので、このムーブメントで明るく開けた業界になってしまうのも、何だか好きなアイドルがメジャーになってしまったようで、寂しい気がしないでもありませんが、業界が大きくなって大会が見られる機会が増えるのは単純に嬉しいです。これから色んなプレイヤーが出てきて、色んな楽しい試合が見られたらいいなぁといった感じです。

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